夜のボートパーティの騒乱の後、11時頃、宿に戻ってきた時のこと。
私はアジェの知り合いがやっている宿に宿泊していたのだが、何やらオーナー家族やら、ザワザワと皆が騒がしい。
私は部屋に戻ったが、アジェは様子を見にその中に入っていった。
※サイババ再び
ところでその日の昼間、私は暑いので部屋のドアを開けっ放しにして、PC作業をしていた。そこへ、この宿のオーナーの息子さん(お手伝いをしているらしい)の、15歳の男の子が入ってきた。
アジェのことを「叔父貴」と呼ぶこの子は、私の持ち物に興味津々で、たまたまいじっていたPCに目をつけ、「旅行の写真が見たい」と言ってきた。彼はムンバイのインド門の写真を見ながら、「ムンバイに行ってみたいんだけど、お父さんが、”行ってもいいけど自分のお金で行け”って言うんだ〜」と話してくれた。
まだ学生さんだもんね、お金も全然持ってないよね。自由も中々ないだろうし。でも大人になったら行けるよ!
写真を見終わった後も、彼は私の部屋でいろいろと話をしていた。
15歳くらいの頃は、私はグレてはいなかったけど、反抗期だったなァ…などと思い出した。何年前だ…考えたくない…
※皆さん美しいです
話を戻すが、皆の様子を見に行って1時間くらいした後、アジェが部屋に来て言った。
ア「あのオーナーの息子の、15歳の男の子がいなくなった。」
は!?!?
ア「お金も持たず、リュック1つで、家族の誰にも言わないで。夜遅くなっても帰ってこなくて、皆で総出で探してたらしい。バラナシの鉄道駅からコルカタに向かう列車の中で見つかったみたいで、連れ戻されてる。」
私「…なんでそんなこと?」
ア「俺全然知らない」
…咄嗟に昼間のことが頭に浮かんだ。
私が見せた旅行の写真である。
私「…昼間、見たいって言うから…あの子に旅行の写真見せた。ムンバイに行きたいって言ってて…」
ア「……それだね。見せちゃダメだよ、そういうのは。」
私「すみません…」
ア「気にしないで!」
やってしまった…!と思った。全く考えなしに。
※バラナシ駅 皆地面に寝てる。
この中を牛がドスドス歩いて軽いパニックが起こったりする
インドの社会は、私が想像している以上に、厳しく縛られていて、自由がない。その子の家はそこそこお金持ちの様子で、手広くいろいろ商売をしている。オーナーは商売人ぽく、気が強そうで厳しそうな人であった。
もちろん、今はインターネットやスマホがあるから、好きな物、写真、いろいろ自由に見られる。でも自分で使えるお金はない、家族にも止められるだろう。彼はずっとムンバイに憧れていたが遠い存在だった。
でもそこへ、実際に行った外国人の私がフラリとやってきて、楽しかったよ〜とリアルな写真を見せてしまった。あの子の、旅に出たい欲が吹き出す引き金を引いた。
あの子のお母さんは、大泣きして、どうして家族の誰にも言わないで、お金も持たないで行っちゃったのかしら…と嘆いていたらしい。
ああー…本当に申し訳ない。と思ったけど。
…でも、正直私は”悪いこと”をしたのかどうか、はっきりとは未だにわからないのである。もし私があの子の立場だったら…お金がなくても、家族に内緒にしてでも、憧れの場所に行きたいという気持ちは、わかる。
そして、彼に写真を見せるべきではなかった…というのもわかる。私は外国人で、世界でもかなり強い日本のパスポートを持っていて、今は大人になって立場的に身軽で、自由に時間があって、好きな場所へ行けて、見たいものを見れるのだ。そんな環境を手に入れるのが難しい人の方が、この世界には圧倒的に多い。
ただ、実現が難しいからといって、その世界を知らない方がいい、見なくていい、という意見は、私は少し違うと思うのです。口紅のCMを見て存在を知るから、女の子は口紅が欲しくなる、という話があるけれど、手に入れるのが大変だから最初から口紅を知るべきではない、という考えはあまり好きではない。
知ってしまうと欲が出る。世界が変わる。もう知らなかった頃の自分には戻れない。でも、世界は広いと知る。わくわくする、見たい、行きたいと思う。だから人類は空を飛ぶ方法を見つけたし、速く遠くへ行く方法を考え出せた。
日本人の私が言う勝手な意見というのはわかっているけど、でもそう思います。
あの子には結局最後まで会えず、宿をチェックアウトしてしまった。
宿で同じ部屋のチリ人の女の子は、声をかけてくるインド人全てを速攻ではねのけていた。「彼らの目的はお金かセックスだけよ。絶対友達になりたいなんて思ってないんだから。」
宿のスタッフさんも「声かけてくる奴は全員無視した方がいい」と言った。
カジュラホで出会ったインド5回目のとある40代日本人男性は、寺で出会って5分のインド人からパーティーに呼ばれ、「行ってきます〜」と去っていった。
男性と女性で危険度は勿論全然違うのですが、どちらを選択するのかは貴方次第。
インドには悪い奴がいっぱいいるのは事実。特に日本人はお金を持ってる気弱な民族と思われ、格好のターゲットになる。私も散々聞いたし、ラッキーも言っていた。
「友達になった日本人、みーーーんなお金騙し取られたって言ってた。大体デリー。インドに初めて来て、すぐやられるみたい。旅行会社について行っちゃって、高いツアーとか組まされる。何ですぐ人を信用しちゃうんだろうねえ」
来る人全てを無視するのはリスク回避に繋がる。確実。
アジェやラッキー達とは、最終的には普通に仲良くなったけど…最初は申し訳ないけどずーーっと警戒していた。いつ騙す?いつ態度を変える?完全に気を許しちゃいけない、出口がない所や叫んで人が来ないような所は入らない、私は日本人で女1人なのを忘れない、とずっと考えていた。
※とある出来事があって、「この人達は信用しよう」と思ったので友達になった。
でも、最初びびりまくってた私が言うのもなんですが、インドを恐れて警戒して、旅行者同士だけでただつるむのは、せっかくインドにいるのに勿体ないとも思うのである。インド人達は人懐っこいし親切。困っていると、何人もの人が今まで助けようと声をかけてくれた。
すごく難しいんですけど、見極めが大事です。今回はたまたま私が超絶ラッキーだっただけなのかもしれない。どうしたらいいのかアジェに聞いたら、
ア「5分話して嫌な感じがしたら、自分を信じてその人とはもう一緒にいない方がいい。別に嫌じゃなかったら、もう少し一緒にいたらいい。」
ご参考までに。
どんな観光地よりも、絶景よりも、人が楽しい、面白い国インド。
やっぱりバラナシは、インドの中での私の不動のNo.1でした。
あ、今回ガンジス川入るの忘れた。
<おまけ>
宿の屋上のレストランで、ゆるゆると働いていたニッピー。22歳のアーティスト。
スタイル抜群でモデルをしており、絵を描き作曲もこなす。南インドのケララ出身で自分大好き。天真爛漫でめっちゃ穏やか。まあこりゃモテるわな!という男の子である。
ニッピーの作ったピザ美味しいね〜と言ったら、
「昔イタリア人の年上の彼女がいて、作り方教えてもらったんだ〜」
その当時、ニッピー14歳。
14歳て。
山のようなモテ男エピソード満載である。「誰にも言わないでね〜」と言われたので、とりあえず守ります。
大都市で売られている雑誌に載ってたり、ギタリストとして歌手のPVに出演している。今後世界的に有名になることを期待。がんばって、将来ギャラで私にアーユルヴェーダおごってくれ。
宿の主人の息子13歳(家出した子とは別)が、ニッピーの髪の毛の中にコーヒー豆をいくつも入れるという恐ろしい遊びをしている