【バラナシ】聖なるガンガのほとりで育った不良の日常 パート1

バラナシに到着。ガンジス川(ガンガ)の街。

川と人々の営みをボヘーっと見るためだけにやってきた。

人生でバラナシは2回目だが、こちらも10年ぶりなので殆ど覚えてない。でも、インドの中で今の所No.1で好きな街である。

駅から、ガンジス川のほとりまでは結構距離があり、電車もないのでオートリキシャを使うしかない。

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※かなりWifi環境が悪く、日が空きました…

鬼のように混んでいる市内をリキシャで延々と走り、釣り銭をごまかそうとする運転手に「100ルピー足りないよオイ」と詰め寄って取り返し、ようやく宿に到着したと思ったら、客引き達が数人私に話しかけてくる。

 

※ガンガでは沢山のおじさんの裸が見れます

 

その中に、アジェという男の子がいた。結構日本語が上手い。「どこいくの?」「東京から?」私は完全無視は苦手なので、こういう質問にはついつい答えてしまう…

※良くないことも多いのでオススメはしませんけど

バラナシ育ちの22歳大学生で、今ちょうど夏休みだから暇なんだ、日本語勉強したいし友達になりたい、と言っている。…もう少し工夫して話しかけたらどうだ。常套手段すぎるわ。

基本的に日本語を話してくるインド人は信用しないことにしているので、最初私は適当にあしらい、振り切って宿にチェックイン。しかし、宿の直ぐ近くがアジェの実家なもんだから、何か食べようと外に出るとすぐに見つかり、「よし、じゃあ一緒に火葬場行こ」と私を引っ張り回す。

勘弁してくれ…疲れているんだよ…いきなり火葬場かよ…

1人になりたい…と思いつつも、牛の💩を必死に避けながら細い路地を歩いている内に、なんやかんやと話して、結局絆されて仲良くなってしまった。

 

※男湯状態のガンジス川

 

一緒に「ハリチャンドラガート」という火葬をしている少し小さいガートを見て、チャイを飲んだが、結局最後まで金は要求されず、宿の近くまで戻ってきた。よかった…

夜の暗い中、迷路のような道をかいくぐり、いろいろ案内してくれたのでまあいいかな〜と思い、お礼にご飯とかご馳走するよ、と言ったら、

ア「じゃあ、マリファナ買って〜ちょびっとなら200ルピーで買えるから!」

私「あほか。ビールなら奢る。でもマリファナはダメ。」

ちぇーーーと言いながら、アジェはビールを選んでいた。しかし…マリファナとビールが同じくらいの値段ていうのもなんだかねえ。

※ヒンドゥー教ではあんまりおおっぴらにお酒を飲むのは良くないとされている。

 

※皆さん気さく

 

道を歩いていると、そこらじゅうにアジェの友達や知り合いがいる。挨拶したり、絡んだりしてるのを見ると、雰囲気的に完全に地元のヤンキーである。なんだアレか、バラナシ生まれバラナシ育ちの、悪いやつ云々か君は。

夜9時過ぎ、地元の若い男の子達がたむろしている川のほとりの空き地に行き、夜のガンガを眺めながら、アジェはビールを飲み、私はジュースを飲んで話す。アジェは昔日本人の彼女がいたらしい。それでかなり日本語が上手く、英語もできるので外国人の友達も多い。

翌日も速攻で発見され、もうなんなんだよ…と思いつつ、ちょっと情が湧いちゃったもんだから、しょうがない弟みたいな感じになってしまい、一緒にあちこち見て回った。

アレなんですかね…こういうのって、「もう一緒に来ないで」と突き放した方がいいんですかね…それが優しさなんですかね…よくわからん…

 

※この人はアジェではない 知らない人

 

一旦帰って着替えてくるから、友達と喋ってて!と、空き地にアジェの友人(通称ラッキー)と放置される。ラッキーは26歳で学生ではなく、仕事をしていると言うが、そんな雰囲気皆無である。アジェの地元の悪友なんだろうな。

試しにラッキーに、「アジェって学生なの?」とカマかけてみると、「うーんよく知らない。たまに学校行き始めてまた行かなくなってを繰り返してるから。でも、あんまりそういうの俺興味ないから気にしないんだ。あいつの人生はあいつのだし、俺のは俺のだから!」と言う。

話を聞いていると、夜はしょっ中仲間同士で集まって、川岸でマリファナ吸ったりして遊んでるそうである。

だめだこりゃ。不良ばっかりだな。

戻ってきたアジェと、超有名な1番大きい「ダシュワメートガート」と、24時間火葬を行っている「マニカルニカーガート」に行く。

※近くでの写真撮影は厳禁

ヒンドゥー教徒は、ここバラナシで死に、川岸で遺体を火葬して、その灰をガンガに流せば輪廻から離脱できるという話は、有名なので聞いた事ある方も多いかと。昨晩見た「ハリチャンドラ」は、近くに機械で火葬する施設もあった。

人の手で火葬するのは、それなりの量の薪と臭い消しの「サンダルウッドパウダー」を使う為、かなりお金がかかる。払えない人は機械で火葬されるらしい。その方が簡単で安いと。そうなのか…知らなかった。

「マニカルニカー」は、こちらも有名な話だが、外国人が火葬場を見ていると、「薪代を寄付しろ」と高額のお金をせびる輩がいる。道を歩いていても、火葬場にいても、残念なことに外国人というのはとにかく狙われやすい。何かと理由をつけて、お金を要求してくるヤツというのはいるもので。

マニカルニカー到着後、背後にある煤で真っ黒な建物のベランダみたいな部分に登り、上から2人で火葬の様子を見た。ここはかなり大きく、一度に同時進行で8人以上火葬できる。

歌声と共に続々と通路から、オレンジ色の華やかな布が被せられた遺体が担架で運ばれてくる。私は、じっと真上から火葬を見たのは初めてだったので、いろいろぼんやりと考えながら見入ってしまった。

※ガートの裏にある薪の山

担架が下され、華やかな布は取られて川に流される。遺体と一緒に薪の間に入れて焼くこともある。遺体は更に白っぽい布に包まれており、薪を組んだ台に乗せられる。そして、仕事人がサンダルウッドパウダーを振りかけて火をつける。

体の大きさで、男性・女性かわかる。布が足りなくて、足が出ちゃっている遺体もある。足先にヘナが塗ってあって真っ赤なのもある。

当然なんですけども、人って、炭素でできてるから、燃えると炭になるんですね。つい先日まで生きていた体が、ただの物質になって燃えていく。

犬の吠え声と人々のざわめきと、遺体がやってくる歌声と、薪の爆ぜる音がずっと響いている。牛が、遺体に乗せてある花のレイをモシャモシャと勝手に食べ始め、遺族に怒られて叩かれている。それでもメゲない牛は、落ちている花や次の遺体のレイに食いつく。犬は川に入ったり、よくわからないものを食べている。

凄い暑さと煙。ここで働く人たちは本当に大変。

赤い綺麗な布に包まれた、小さい遺体が到着した。

私が、女の人だね、まだ若そうなのに…と言うと、アジェはサラッと言った。

「This is Life.」

人生はいつ終わるのかわからない。でもいつか、みんな死ぬ。

おばあちゃんになるまで生きられる人、若くして亡くなる人、最高に人生楽しんだ人、志半ばで息絶えた人、どんな人でも、最後は自然に還っていく。

後で知ったのだが、アジェのお父さんは6年前既に亡くなっていた。家族を取り仕切って支えて頑張ってる矢先、コブラに噛まれたらしい。まだアジェは16歳で、お婆さんとお母さんと妹と共に残された。

今思えば、どんな気持ちでアジェは私に「This is Life.」と言ったのだろうか。

ア「ところでさ、俺のこと好き?考えて!俺は彼氏や旦那がいても、全然気にしないよ。どうよ?俺のこと好きじゃない?」

…人の遺体が焼かれているのを一緒に見ながら口説かれたのは、人生で初めてである。

私「火葬場で女の人を口説くってどうなのよ。ロマンチックなムードもへったくれもないなアンタ。しかも11歳も離れてるんだよ。血迷うんじゃない。」

ア「だって…火葬場はここで育った俺にとって日常風景だもん。別に珍しくもなんともないし特別でもないし。普通だから。俺は俺のタイミングとシチュエーションで言う。」

笑いながら、その言葉を聞いて、ふと、アジェやその友達が、”生も死も身近な場所”と呼ばれるバラナシで暮らしている、という事実が腑に落ちた。彼らにとっては、バラナシで繰り広げられる光景は日常。インドの人達にとって野良牛がその辺をウロウロして排泄していても当たり前と同じレベルで、物乞いも、遺体が道端を運ばれて行くのも焼かれるのも、川に入って必死に祈る人々も全てが当たり前だから、同じ場所でご飯も食べるし遊ぶし、女を口説くのもデートするのも、何の不思議も違和感もない。

私があまりにもずっと、暑い中煙に燻されながら遺体が燃えるのを見ているもんだから、さすがに付き合いきれんと思ったらしく、アジェは「俺友達と話してるからね、1人になって脅されても絶対にお金払うなよ」と言い残し隣の建物の屋上へ。

優しいことに、ちょくちょく様子を上から見てくれていたようで、誰かが私に近づいて話しかける度に、上から石を投げてヒンドゥー語で追っ払ってくれていた。イイやつだなあ…

パート2に続く。

興味が湧いたらパート2もよろしくお願いします。

 

<おまけ>

毎晩ダシャーシュワメートガートで行われる「プージャー」というお祈りの儀式。

カーストの最高位「バラモン」が、ガンガに祈りを捧げる。観光客毎晩沢山。

この人がめっちゃくちゃイケメンで、目の前まで近づいて写真撮りまくった。イケメンでバラモンだなんて、人生最高にイージーモードである。

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